ナイチンゲールが生まれたのが1820年ですので、2020年で200歳という節目を迎えています。
この2020年は、世界でも激動の年でした。
そうです、新型コロナウイルスにより世界中が大混乱に陥りました。
日本でも有名な方が罹患したり、緊急事態宣言というものが発令されたり、マスクがなくなったり、飲食に行けなくなったり…
様々なことが起こりましたね。2年後の2022年でも、まだまだWITHコロナが達成できていない状況にあります。
この世界的な感染拡大があってから、医療従事者の重要性がますますいわれるようになりました。
日本全国どこの都道府県でも、医者や看護師不足が浮き彫りになり、医療が逼迫している状況がずっと続いています。
そんな時期を過ごしている、私たち現代に生きるヒトであるからこそ、もう一度ナイチンゲールの提唱する看護について考えてみたいなって思いました。
今回紹介するのは、ナイチンゲール生誕200年を記念して発刊された
ナイチンゲール「三重の関心」 病を癒す看護、健康をまもる看護
です。
「看護覚え書しか知らないわー」っていう看護師さん、看護学生さんも手にとって読んでいただきたいです。看護の基礎を改めて考えることができます。
看護覚え書について改めて学習したい方はこちら
どんな内容?
構成は、3ブロックに分かれています。
- 病をいやす看護、健康をまもる看護
- ”三重の関心”とは何か?
- ナイチンゲールが描いた地域・在宅看護
この中でも今回は、”三重の関心”とは何か?について、紹介していきます。
三重の関心
皆さんは、ナイチンゲールの提唱する「三重の関心」はご存じでしょうか。
知的な関心
技術的な関心
心のこもった倫理的な関心
三本の糸を撚り合わせることで質の良い丈夫な糸ができるように、三重に関心を向けることが質の良い看護につながるのだと考えてはどうだろうか。つまり、病気や事例に偏った関心を向けることの危険や、患者の気持ちに巻き込まれることの危険、病状や心情を踏まえずに技術を適用することの危険をthreefold interest ならば回避でき、本来の看護(nursing proper)ができると考えたのだと推測できる。
ナイチンゲールと「三重の関心」 p115 より
三重の関心を理解するうえで、これぼどわかりやすい文面はないと思います。
実習教育と三重の関心
実習では、よく「病態の学習ができていない」「患者さんの病態を捉えられていない」「観察項目が言えない」など知識の面が強調されている場面をよく見かけることがあります。
中には「病態の学習ができていないので、患者さんのところに行かせることができません。」と、患者さんのもとに挨拶やお話をすることすらもさせてもらえない学生さんも見たことがあります。
実習中に病態について学習することは、本当に大切です。
患者さんが苦しんでいることが、病気や治療、症状にあるのは当然のことで、そこに関心をもって理解することが看護を考える一つになりえます。
三重の関心の「知的な関心」の部分にあたりますよね。
だからといって、そこが出来ていないからという理由で、他の「関心」にまで学習をさせないというのは教育としていかがなものかと考えます。
看護師は生きている身体と生きている心に働きかけなければならず、看護実践が意思をもつ生きている人間への働きかけであることを特に強調して、看護師は自分の仕事に「三重の関心」をもたなければならないと著した。
ナイチンゲールと「三重の関心」 p117 より
患者さんの「病気」を看るのが看護がなすべき働きかけであるのではなく、「病気をもって生きている患者さん」を看るというのが、看護がなすべき働きかけであるということです。
実際に患者さんと接することで、苦しんでいる症状を目の当たりにすることでしょう。そして、その苦しみがどう患者さんの心にまで影響をもたらしているのかを知ることもできるでしょう。
そこから、患者さんのためにできることは何か…。看護を考える訓練につながるはずです。
実習で学生さんが学ぶべきところは、「患者さんに関心をよせて看護を考えること」であると思います。
そのため、実際に患者さんのところにいき、患者さんと関わり、話し、技術を実践し、そこから患者さんにとっての意味を考えて深めていくことが、学生さんの「関心」を育んでいく場としての実習教育になってくると思います。
おわりに
看護師さんにも、看護学生さんにも、教員の先生方にも本書をぜひ手に取って読んでいただきたいと思います。
自己の看護実践や看護教育の指針として、改めて考え直すことができるのではないかと思いました。
大学教育で「学び方を学ぶ」ことは、コロナ渦にある今後も学び続ける生活を選ぶかどうか、看護専門職として生きる人生を続けるかどうかの選択に際して主体的な看護師の強みとなり、病める人や健康な人に看護をしたいという強い意志(calling=使命感)を支えるものと考えられる。
ナイチンゲールと「三重の関心」 p119 より
著書でこう述べられています。
看護学生時代に、患者さんへ「三重の関心をもって学ぶ」という学び方をぜひマスターし、ナイチンゲールが言う「使命感」をもって看護を実践してほしいと思います。
本書には、ほかにもたくさんの看護を考える上でのヒントが著されています。
ぜひ、手に取ってナイチンゲールの考える看護の世界にどっぷりと浸ってほしいと思います!