看護学生のみなさん。実習に行ってこんな疑問は出てきたことありませんか?
「学校の授業で習ったことと、看護師さんがやっていることが違う!」
これは、誰もが1度は思ったことではないでしょうか。
ぼくも看護師として病棟で働きだしたときに
あれっ?って思ったことがあります。
これはぼくの偏見かもしれませんが、とくに思うのは「全身清拭」ではないでしょうか。
学校では、熱湯入りバケツとベースン、ウオッシュクロス、石鹸、バスタオル…などを用意します。
臨床ではホットタオルまたはディスポーザブルの清拭タオル(おしぼりみたいなやつ)を使用している病院さんもたくさんあります。
ぼくが勤務していた病院ではホットタオルを使用していました。
それぞれ病院さんによって考え方がありますので、何が良くて何が悪いっていうのはないのですが、学校で習ったこととやっぱり違うのでどうしても「?」ってなりますよね。
そこで今回は、「学校と臨床とのすり合わせ企画」として全身清拭について解説をしていきます。
実習で臨床と学校の違いに戸惑っている学生さんは、ぜひ参考にしてください。
この記事から何かしらのヒントを得てほしいと思います。
学校で習う全身清拭
最初に看護学校で習う全身清拭の方法について簡単におさらいしていきましょう。
お湯の温度 50℃以上
清水バケツ、汚水バケツ、ベースン2個(清水、泡)、水汲みピッチャー、水用ピッチャー、温度計、石鹸、タオル顔面清拭用、バスタオル2枚(乾拭き用、熱布用)、綿毛布、ゴム手袋
- 顔面・頸部
ウォッシュクロスを指に巻き付けて実施。 - 上肢
湯を変えて、ウォッシュクロスを作成し拭いていく。
50℃の湯でウォッシュクロスを作成するとウォッシュクロスは42℃程度となる。ウォッシュクロスが皮膚に当たる温度が40~42℃で温かいと感じる温度となる。
手関節、前腕、ひじ、上腕、肩、腋窩を拭く。 - 胸部・腹部
- 下肢
湯を変えて、ウォッシュクロスを作成し拭いていく。
大腿、膝窩部、ひざ、下腿、足関節を拭く。 - 背部
側臥位にし背部を清拭する。 - 臀部
という感じの流れで実施します。
ベースンに入れているお湯は、ウォッシュクロスを1回ゆすぐごとに1℃低下すると言われていますので、熱いお湯をバケツに用意して適宜変えていく必要があります。
学校と臨床での根本的な違い
看護学校の基礎看護技術で学習する全身清拭では、ほとんどの場合が臥床患者さんで動けない人を想定して技術演習をしていると思います
患者さんの設定をガッツリと決めている学校さんもあれば、ふわっとしか決めていない学校さんもあるでしょう。
この部分で一気に学校と臨床との違いが出てきます。
臨床は必ず患者さんがいて、自分でできる人もいれば、それこそ全く動けないという人もいます。
それぞれの患者さんに合わせてた援助をしないといけなくなります。
そのため、学校の演習で実施する患者さんは、一つの事例だけでの練習になり、すべての患者さんにそのままバッチリ当てはまるわけではないのです。
っていうか、実習で受け持つ患者さんで考えるとほぼ当てはまりません。
「学校で習ったことが患者さんに当てはまらないって?
それだったら学校でやっていること意味ないじゃん!」
って思いますよね。
学校で習うことが、そのまま患者さんに使えることは、ほぼありません。
悲しい…😢
だからといって、学校で習うことが意味がないのか…?
ちゃんと意味はあります。学校で習うときはココがポイントになります。
そのポイントとは、「原理原則」です。
授業では原理原則を学ぶ
原理原則って聞いたことありますよね。
基礎看護学の先生がよく言うやつ。
なぜ、そんなに言われるのか。
これが、一番大切だからなのです。
原理原則とは、その援助をなぜそういう風にするのかの根拠に当てはまります。
例えば、「ウォッシュクロス」。
実習にいってウォッシュクロスを手に巻いて清拭を実施している看護師さんの姿を見たことがありますか?
ウォッシュクロス用のタオルがあって、それを使用できる状況であれば看護師さんはウォッシュクロスを作成して実施していることでしょう。
しかし、冒頭で述べた通り、病院によってはホットタオルやディスポーザブルタオルを使用しています。
これらを手に巻き付けてウォッシュクロスを作成していたらどうなると思いますか?
そうです。あっという間に冷めてしまいます。
冷めたそばにベースンがあって熱湯があったらゆすげばいいですが、そのベースンがない状況もあります。
では、なぜ学校ではウォッシュクロスを作成するのか。
ウォッシュクロスの根拠を調べてみてください。
心地よい実施ののため、清拭する部位の厚みが均一にできる。
タオルの端を処理することで、冷感を与えない。
コンパクトで保温効果が期待できる。
これがウォッシュクロスを使用する根拠であり、清拭の「原理原則」となるのです。
ただの手順ではなく原理原則を知っておくことで、物品が違っても応用できるようになります。
臨床で実施するとなるとある物品とない物品がありますよね。さらに在宅となると余計にないもの、使用が制限されるものが増えてくると思います。
臨床を想定した清拭の実施方法
それでは、いよいよ臨床を想定した清拭の実施方法について解説をしてきます。
今回はディスポーザブルタオルを使用していきます。
病院ではコスト管理もとっても重要で、病院経営の視点からも看護を考えていかないといけません。
一人の患者さんに対してどれぐらいコストをかけることができるのか。
それを知っておく必要があります。
患者さんへの看護にとって本当に必要なコストは、惜しみなく使用していいです。
しかし、不必要に物品を使いすぎるのはよくないです。
そこで、今回の設定として、ディスポーザブルタオルを3枚で実施するという設定で行います。
また、患者さんの設定としては、学生さんが基礎実習で受け持ちそうな
- 後期高齢者
- 大腿骨頸部骨折
- 術後でリハビリ期
- ある程度の日常生活が自立
の患者さんへの全身清拭を実施します。
まだ、術後でシャワーができないため全身清拭を実施します。
- 熱めのディスポーザブルタオル3本
- タオルを入れる保温バッグ
- バスタオル (患者さんのもの)
患者さんと時間の調整を行い、実施前にバイタルサイン測定や観察を行い実施できるのか評価をします。
- 患者さんに声をかけて、物品の準備。
- 訪室しプライバシーの配慮や病室の環境調整。
- できるところは患者さんにしてもらえるように声をかける。(大腿骨頸部骨折なので上肢は問題なし)
- 体位は、ベッド上端座位。
- 上衣を脱いでもらい、背中にバスタオルをかける。
- タオルを出して、折りたたんで渡す。(ウォッシュクロスを作るとタオルを大きく広げてしまうことになり、冷めてしまう。そのため、ウォッシュクロスと同じ効果が得られるように素早くたたみます)
- 前を本人に拭いてもらい、拭いた場所を後ろからバスタオルで乾拭きをする。(気化熱を奪い、冷感を与えてしまわないように)
- 前が拭けたら、新しいタオルを取り出す。この時は、折りたたまずに、広げて背部に当て、その上からバスタオルで覆う。
- その上からちょっとマッサージ的な感じで背中をタッチング。
- 3~5分ほど(あまり長すぎると冷めてしまう)で、タオルを取り、素早く折りたたんで背部を清拭し、バスタオルを裏側にして乾拭きをする。
- 上衣を着る。
- ズボンを脱いでもらい、下半身にバスタオルをかける。
- タオルを取り出して、素早く折りたたみ清拭を実施。
- 片足が終了したぐらいで、タオルの面を変えて実施。
- バスタオルで乾拭きを行う。
- ズボンをはいてもらう。
というような流れになります。
イメージできましたか?
できるところは患者さんに実施してもらいます。
下肢については、術後で創部もあるため、看護サイドで実施しましょう。
術後患者さんへのケア。包帯の巻き方再確認!
おわりに
学校と臨床とのすり合わせ企画として、全身清拭を解説していきました。
一番の違いはやっぱり患者さんがいるか、いないかです。
学校では「原理原則」をしっかり理解することに重きを置いてください。
そして、臨床では原理原則を考慮した患者さんに合わせた援助を考えられるようになってください。
看護に間違いはありますが、正解はありません。
今は、経験もほとんどないため臨床に合わせた実施に不安があると思います。
たくさんの患者さんとの出会いが、その不安も解消してくれるでしょう。
学校で学習した原理原則を駆使して、患者さんへの看護を追求していってください。
基礎看護技術の記事はこちら
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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