今回のテーマは筋骨格系についてです。
動くことについて、解剖生理からフィジカルアセスメントまで解説していきます。
今回の記事もたくさんの書籍を活用して作成しました。最後に参考書を載せていますので、ぜひ見ていってほしいと思います。
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関節の構造と機能
関節とは、2つ以上の骨が接する部分のことであり、可動関節の構造は下記の通りです。
関節包の内側にある滑膜から滑液が分泌され、関節腔が満たされています。
滑液は骨と骨との摩擦を減らし、滑らかな動きができるような潤滑油の働きをしています。
関節の種類は大まかに単関節(2つの骨がつくる関節:肩関節・股関節など)、複関節(3つ以上の骨がつくる関節:肘関節など)に分けられます。
また、動く方向にも関節は分けられます。それぞれについてみていきましょう。
関節の動く方向による分類
①球関節
一方が球のように丸くなっていて、もう片方が受け皿のようになっている関節です。
この関節の代表は肩関節や股関節です。とくに股関節は臼状関節とも呼ばれます。
関節頭が球状になっているため、回転することができます。最も可動域が広い関節です。
※臼状関節とは
深く関節頭が関節窩に入り込んでいる構造で、可動性がやや制限されます。
②蝶番関節(ちょうつがいかんせつ)
一方向だけに動く指の関節(指節間関節)や肘の曲げ伸ばしの関節(腕尺関節)です。
ドアの開閉のための金具を蝶番(ちょうつがい)といいますが、動きが似ているのでこの名前になっています。
③鞍関節(あんかんせつ)
おもに二方向に動く親指の関節(母指の主根中手関節)です。
④楕円関節
球関節のように自由に回るわけではない手首の関節(橈骨手根関節)です。
⑤車軸関節
前腕をひねるときの関節(上橈尺関節)です。
⑥平面関節
少しだけ動く椎間関節(背骨は脊柱と呼び、構成する骨1個が椎骨・椎間は、椎骨同士の間)や胸鎖関節(胸の中央にあるネクタイのような形をしている胸骨と鎖骨で構成される関節)です。
面
人体の位置や方向を表現する際には、解剖学的肢位を基準として決められている面や軸に関する用語を用います。
矢状面
正面を向いて直立している体を、左右で真っ二つに切る面を、矢状面といいます。
矢が前から飛んでくる向きをイメージしてください。
前額面
人体を前後で分ける面です。
前額を切り取る面をイメージしてください。
水平面
体を上下に真っ二つに切る面になります。
関節運動について
関節を曲げたり、動かしたりという動作を組み合わせることによって、体を動かしています。それらについて見ていきましょう。
関節の運動
運動力学的に屈曲と伸展、内転と外転、内旋と外旋、回内と回外の8種類があります
それぞれの動きは対をなしています。
屈曲
関節の角度を減少させて、骨と骨とを近づける運動です。
例 肘関節、膝関節の屈曲
伸展
屈曲とは反対に、関節の角度を広げる運動です。
例 肘関節、膝関節の伸展
内転
四肢のどれかを身体の軸に近づける運動です。
例 肩関節の内転(側方に引き上げた腕をおろして身体に近づける)
外転
手や足を身体の軸から遠ざける運動です。また手や足の指を広げる運動です。
例 肩関節の外転(上肢を側方へ引き上げる運動)
内旋
上腕や大腿を軸にして、身体の中心に内側に回転させる動きです。
例 肩関節および股関節の内転
外旋
上腕や大腿を軸にして、身体の中心に外側に回転させる動きです。
例 肩関節および股関節の内転
回内
前腕を軸とした回旋運動のことです。
前腕が内向きに回転して、手掌が下を向く運動をさします。
回外
前腕が外側に回転して、手掌が上を向く運動をさします。
回内・回外では、尺骨を軸に橈骨が回っています。
関節可動域のフィジカルイグザミネーション
関節可動域(ROM)とは関節の運動範囲のことです。
骨を中心とした関節自体の構造や筋肉、腱、靭帯、皮膚を含めた軟部組織の伸展性などが影響します。
関節の可動域には、自分で動かせる範囲を見る「自動的関節可動域」と他者や機械などの外力で動かせる関節の範囲をみる「他動的関節可動域」があります。
関節の角度を測るには、角度計を使用します。
基本軸から移動軸の間を測定していきます。例えば、肩の屈曲・伸展なら、肩峰を通る地面への垂直線が基本軸(動かない軸)、上腕が移動軸となります。
基本軸と移動軸は、各関節運動に対してそれぞれ決められています。確認しながら測定をしていきましょう。
測定するときは、基本肢位からはじめます。
基本肢位は、それぞれの関節が0°である肢位です。
患者さんに基本肢位になってもらいます。
測定したい関節を自動的に動かしてもらいます。
動かした位置で固定し、角度計を用いて測定します。
測定する際は、基本軸が動かないように注意しましょう。
関節可動域(ROM)のフィジカルアセスメント
どの部位が、どこまで動かせるのかを測定し、ADLに不都合や不便が生じていないかを見極めます。
評価の指針として参考可動域角度が決められています。
あくまで参考値です。動く範囲は個人差がありますので、ここまで動かないと異常であるとか、この値を超えてはいけないなどということはありません。
むしろ、関節の基本的な運動ができるのか、あるいは極端な左右差がないのかに重点をおいてアセスメントをしていきます。
関節可動域が制限されていても、代償動作により日常生活を維持している場合もあります。アセスメントの視点としては、日常生活に支障をきたしているのか、日常生活の支援としてどういったことが必要になるのかを考えましょう。
また、普段の日常生活活動に必要な関節可動域を知っておくことで、アセスメントの視野が広がり患者さんへのよりよい支援に繋がっていきます。
実習で活用するならこちらも参考に!
まとめ
関節のフィジカルアセスメントについて解説していきました。
関節可動域を知ることは、入院している患者さんの困っていることを知るきっかけにもなります。
普段の自分の生活から、この動きは「どの関節が」「どのような動き」で「どれぐらいの角度」を必要としているのかを考えてみるのもいいかもしれないですね。
きっと看護の質の向上にもつながると思います。
今回の参考文献です。どの本もわかりやすく解説してくれていますし、関節可動域角度についてもしっかりと載せてくれています。ぜひ見てみてくださいね。