看護の基礎技術

基礎看護技術 陰部洗浄①

基礎看護技術。今回のテーマは陰部洗浄です。

清潔の援助って「臨床現場で実施している方法と学校で習う方法が違う」とよく色んなところで聞くことがありませんか。

確かに病院や施設にある物品と大学や専門学校で用意している物品では差がありますよね。また、患者さんが持ってきている物品でも違ってきたりします。

ということで、具体的な方法については違いはあるのは当たり前なのかなと思います。
ただ、基礎看護技術として抑えておかないといけない考えかたや技術については同じですよね。

そこで、ぼくが授業で実施している内容で看護技術を紹介したいと思います。

看護師さんは、普段の援助に参考になりそうでしたらぜひ活用してください。
看護教員の先生方は、使えそうなところは授業の参考にぜひ活用してみてください。
看護学生さんは、看護技術の事前学習にぜひ活用してください。

陰部洗浄について

陰部、肛門部は排泄物などにより汚染されやすく、細菌が繁殖しやすい部位です。
また、陰部は肛門と近く、排泄物の汚染などにより陰部へ細菌が侵入しやすくなっています。

肛門部には肛門嚢があり、そこにアポクリン腺が分布しており、粘膜の分泌物が出ています。
女性の場合は、膣からの分泌物が見られ、陰部や肛門部は汚染しやすい環境にあります。陰部は、湿度や湿気、暗さなどの条件により細菌が繁殖しやすいです。
また、オムツの使用やベッド上排泄、カテーテルの使用を行うと感染の確率が高くなります。

このように感染を起こしやすい状況である陰部を清潔に保つことで、尿路感染や皮膚トラブルを予防するとともに、患者さんに爽快感を与えるという効果も大きいです。

陰部洗浄は、羞恥心、緊張感を伴うケアでもあります。そのため、患者さんの心理的負担を軽減できるような配慮が必要となります。

陰部洗浄の目的

  1. 排泄物による化学的刺激から皮膚を守り、陰部を清潔に保つ。
  2. 悪臭と掻痒感が除去され、爽快感が得られる。
  3. 二次的な尿路感染を防止する。

陰部洗浄はどのタイミングでするのか??

最低1日1回?

オムツ交換時に陰部清拭を行った研究では、オムツ交換だけのときよりも細菌の量がすくないとの報告があります。
このことからも、毎回の陰部清拭だけでも細菌の繁殖防止に役立っているといえますね。

頻回の下痢や臀部の発赤が見られる場合などは、清拭の刺激により悪化するので、毎回の陰部洗浄が望ましいでしょう。

ただ、陰部洗浄は、患者さんのプライバシーへの配慮や羞恥心を伴う援助でもあります。
また、頻回の洗浄となると、皮脂を過剰に取り去るうえ、機械的な刺激による皮膚の損傷ドライスキンの助長も考えられ、体位変換に伴う疲労感なども考慮する必要があります。

目の前におられる患者さんによって違ってくるため、患者さんの状態や状況にあった方法や頻度を考える必要があります。

病棟の日常業務で午前中に実施と決まっているから実施というわけではないですよね。
目の前の患者さんにとって最適な陰部洗浄につながるようしっかりとアセスメントしてから実施していきましょう。

準備物品

  1. 陰洗ボトル
  2. 綿毛布
  3. 陰部洗浄用の清拭タオル
  4. ビニールエプロン
  5. プラスチックグローブ
  6. 防水シーツ
  7. 差し込み便器
  8. バスタオル
  9. 洗浄時のガーゼ
  10. 洗浄剤(ボディソープ、固形石鹸、泡のボディソープ等)
  11. ビニール袋

ほかにも新しい下着やオムツなども必要になります。患者さんの状態を考えた上で必要なものを準備していきましょう!

①陰洗ボトル

お湯の温度38℃~40℃でぬるめに調整します。
陰部は特に皮膚や粘膜が刺激に弱く陰部を高温や物理的刺激・化学的刺激で傷つけないように、お湯の温度に十分に注意しましょう。

お湯の量について

しっかりと石鹸分を流せるだけの量を準備しましょう。
陰洗ボトルは、大体450ml容量のものが一般的に流通しています。
部位によって流し方を変える必要がありますので、 少なくても容量の量ぐらいは準備しておく必要があります。

②綿毛布

タオルケットで代用もできます。
プライバシーへの配慮、保温、汚染の防止、寝具に臭気がこもらないように使用します。

③陰部洗浄用の清拭タオル

直接的に陰部を拭く用ではなくて、陰部洗浄後の水分を拭き取ったり、お湯を流した時に鼠径部などから流れ出ないように土手(?)に使用します。

④ビニールエプロン

スタンダードプリコーションに則って、感染対策をしていきましょう。

⑤プラスチックグローブ

グローブは必要な量を考えて準備しましょう。
どのタイミングでグローブを変えるのかを把握しておく必要があります。

⑥防水シーツ

あらかじめ引いていることもありますが、ビニールシート等で、できたら別で準備しておきましょう。

⑦差し込み便器

今回は洋式便器を使用します。
(便器の種類などについてはまた別の機会に説明できたらと思います。)

便器を使用する理由

臨床現場では、オムツを使用して洗浄を行っていることが多いと感じます。

オムツの中で洗うということは、陰部や臀部などに付着した汚物を流したお湯が常に臀部にあることを意識しておく必要があります。

つまり、臀部が常に汚染されている状態となってしまうということです。
便器に臀部がはまっている状態といってもいいかもしれません。

オムツで陰部洗浄を実施する際は、それを意識して常にきれいな位置に臀部が来るように援助をしてください。

また、使用したお湯の量や排せつがあった場合に、吸収しきれない可能性もあります。

便器を当てる行為がリハビリにもつながります。
オムツが外れるようにリハビリや自立に向けて援助を考えていきましょう。

使用前に温めておく

便器が冷たいと、患者さんの不快につながります。
また、寒冷刺激による交感神経刺激による便意の喪失、筋肉の緊張を起こし排泄困難になってしまうことなどがあります。

50~55度程度のお湯ステンレスの便器に2/3程度入れてあたためると、約38.1℃程度まで上昇します。
便器にカバーを当てるのもいいでしょう。

⑧バスタオル

保温とプライバシーへの配慮等で使用します。

⑨洗浄用のガーゼ

施設によって使用しているものが変わります。
ガーゼを使用することで陰部への刺激も少なく洗浄もしやすいでしょう。
グローブをつけて手で洗浄する施設もあります。

⑩洗浄剤(ボディソープ、固形石鹸、泡のボディソープ等)

皮膚に優しい洗浄剤を選択してください。
無いからといってハンドソープなどで代用はしないでくださいね。

⑪ビニール袋

使用後のオムツやガーゼ、グローブなどを入れます。
ないと本当に困ります。

実施の環境

室温

24±2℃
肌を露出することがありますので、やや高めで設定をします。
隙間風などがあれば、冷感を与えてしまいます。注意しましょう。

プライバシーへの配慮

カーテンやスクリーンの使用、綿毛布を活用しましょう。
同室者にも配慮しましょう。
便器や物品の持ち運びの際に目につかないようにする、大きな声で陰部洗浄をすることを伝えない、におい、音などにも気を付けてください。

ワゴンの位置

動線を考慮し、患者さんを常に観察できるような位置を考えましょう。

ワゴンの上の配置

清潔と不潔を考えて配置しましょう。

個人防護具の着用

スタンダードプリコーションの遵守です。
エプロンやグローブを着用し自分が感染を広げないように注意しましょう。

ベッドの高さを上げる

ボディメカニクスを活用できるように、ベッドの高さを調整してください。

少し長くなってきたので、続きは次回に。

基礎看護技術 陰部洗浄②
https://tumulabo.link/kisokangogijutu-inbusenjou2/

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