バイタルサイン測定は看護のどの場面でも必要になります。
急性期からリハビリ期、慢性期、終末期。
母性看護、小児看護、精神看護に老年看護・・・。
看護を実施するうえで必須の技術ですね。
確実に測れるようになっておかないと、患者さんの異変に気付くこともできなかったりします!
バイタルサイン測定の中の、今回は血圧測定にスポットを当ててみようと思います。
血圧測定って意外と難しくないですか?
とくに看護学生さんの実習での最初の登竜門ではないでしょうか。
今回は、特に根拠の部分を中心に解説していきますので、ぜひ役立ててくださいね。
参考図書です。
これらの本は本当におすすめ。
持っていて損はないと思います。
実習指導者さんとも戦えるようになりますよ(笑)
血圧測定の方法
まずは、血圧測定の基本的な方法についておさらいしていきましょう。
- 血圧計が使えるのか必ずチェックしておきましょう。
- 患者さんに血圧測定することを説明します。
- 体位を整えます。
- 腕を出してもらいます。
- マンシェットを巻きます。
- 触診法は動脈の拍動を確認します。聴診法の場合は聴診器を肘窩の上腕動脈の上に置きます。
- 圧を入れて測定していきます。
- 数値のメモをとり、終了します。
手順的には、これぐらいのステップですね。
ちょっとちょっと簡単すぎませんかーー!!!
そうですよね、それでは一つ一つ確認していきましょう!
①血圧計のチェック
まずは血圧計がちゃんと作動するのかをちゃんとチェックしていきましょう。
血圧計とマンシェットをつなぐゴム管が裂けていないか、劣化していないかを確認します。ちゃんと接続部分までみておきましょう。
電池を使用する物の場合は、必ず電源が入るか電池の残量が残っているのかをチェックします。
次にマンシェットに破損がないかを見ます。
マンシェットをアルコールのボトルか何かに巻いて空気を入れていきましょう。
または、マンシェットのマジックテープの端っこの方と端っこのほうをくっつけると、空気がマンシェットに入って圧力が上がっていきますので、手で押さえたりする必要がありません。
手で押したりすると、力を使うし、圧力が一定ではないので、目盛りが上がったり下がったりするので、ちゃんとチェックができません。
120mmhgぐらいまで空気を入れて、目盛りが下がっていないのか、液晶タイプだったら液晶が切れていないかをチェックします。
②患者さんに説明する
測定する前に必ず患者さんに声をかけておきましょう。
訪室していきなり「測定します!」となると患者さんの準備が整ってないのに急がせてしまい測定することになります。
必ず、先に声をかけて、血圧の変動因子をできるだけ除外するように準備を整えてもらいましょう。
- 直前の運動の有無(リハビリ、散歩、買い物など)
- 痛みや疼痛の状態
- 入浴後
- 食後
- 喫煙
- 排泄の有無
- 日内変動
- 気温
- 睡眠
- 精神的な興奮
など
これらがあるようでしたら、30分ほど安静にしてもらってから測定するようにしましょう。
(ただ、患者さんやその時の状況に合わせて、10分でいい人、1時間は安静にしてもらった方がいい時を考えて測定してくださいね。)
疼痛についてはしっかりと評価できるようにしておきましょう!
声をかけて、準備ができたら測定していきます。
学生さんの場合は、触診法で測定してから聴診法で測定します。
その声かけも忘れずにしてくださいね。なぜ2回測るのか、どうやって測るのか。
今回は、○○さんの血圧測定が初めてですので、脈である程度の血圧の値を測ってから、聴診器でしっかりと測っていきます。そのため、2回測らせてもらいます。
という感じの説明でいいのではないでしょうか。
皆さんでも色々と検討してみてくださいね。
③体位を整える
いつもどのように測定しているのかを確認します。
できるだけ、同じ時間、同じ姿勢で測りましょう。
マンシェットを巻く部分が心臓と同じ高さになるようにしましょう。
心臓よりも高くすると血圧が低く、心臓よりも低くしてしまうと血圧が高い値になってしまい、正しい測定結果が得られません。
高低差が1㎝あたり0.7mmhgの差が生じると言われています。
④腕を出してもらう
測定する腕を出してもらいます。
半袖などを着用していれば、すぐに測れますよね。
冬場の寒い時期にたくさん着こんでいるときは、上着を脱いでもらいます。
では、長袖のトレーナーやシャツなどを着ているときはどうするのか。
原則としては、測定部位の衣類は脱いでもらいます。
ただ、2㎜程度までのシャツなどでしたら、その上から巻いても測定値が変わらなかったという報告もあります。
ですので、厚くなく薄いシャツ程度でしたら、服にしわがないようにして巻いていきましょう。
袖をまくり上げて測定することも可能ではありますが、まくり上げた服が腕を締め付けて圧迫してしまい、血流に影響を与えます。
2㎜の服をまくり上げて測定すると10㎜hg以上の変化があった人は30%で、4㎜の服をまくり上げた場合は、10㎜hg以上の変化があった人は40%にものぼったという報告があります。
上記のことから、薄手のシャツ(2㎜以下)でしたら、上から巻いた方がいいでしょう。
厚手の場合は袖を脱いでもらって測定するようにしましょう。
⑤マンシェットを巻く
マンシェットの幅
マンシェットを巻く前に大切なこと。
マンシェットの幅はいかがでしょうか。
患者さんに合ったサイズを選びましょう。
なぜなら、幅が小さすぎると実際よりも低く、幅が大きすぎると実際より高く測定されてしまうと報告されています。
年齢などで幅が区別されている論文もありますが、人それぞれ腕の大きさ、長さが違いますよね。
教科書的には、上腕の長さの2/3の幅、もしくは測定部位の円周の40%程度のものを選ぶとよいと言われています。
参考にしてくださいね。
血圧測定に行く前に患者さんの腕の太さ、長さを確認しておく必要がありますね。さりげなくチェックできるように!
マンシェットの巻き方
マンシェットの中にはゴム嚢という空気をいれる袋が入っています。
実際、そこに空気を入れて腕に圧を加えていき、測定していきます。
上腕動脈の上にゴム嚢の中心が来るように巻きます。
そうすることで、上腕動脈が均等に圧迫されて正確な値を測定することができます。
では、上腕動脈の上にゴム嚢の中心がくるようにするにはどうすればいいのか・・・
それは、「ゴム嚢を半分に折り曲げて、そのまま上腕動脈にあてる」といいと思います。
時々マンシェットに◎印がついていて、ここが中心ですマークがあるのを見かけますが、マンシェットについているマークですので、ゴム嚢の中心とズレている可能性も考えられます。
確実に測定するならば、必ずマンシェットではなくて、ゴム嚢の中心が上腕動脈にくるように中心で折ってあてるようにしてほしいと思います。
動画でも確認できます。よかったらマンシェットの巻き方参考にしてください!(音なしです)
マンシェットの巻く位置
マンシェットの下縁を肘窩より2~3㎝上に巻くようにしましょう。
そこは学校で習ったよー。
聴診器を当てられるスペースの確保ですよね。
そうですね。
それもありますが、触診法の場合だと聴診器は関係なくなりますよね?
皆さん肘を上にして、伸ばしてみてください。
その時に肘窩の両サイド(ほんの少しだけ中枢側かな?)は固くないですか?
肘関節は上腕骨に橈骨、尺骨がくっつくような形になっています。
橈骨と尺骨がくっつくところあたりに、上腕骨の内側上顆・外側上顆があります。
その上にマンシェットを巻いてしまうと、固い骨の部分と柔らかいそれ以外の部分とを一緒に圧迫してしまうので、均一に圧を加えることができなくなってしまいます。
正しい血圧を測定するのでしたら、肘窩より2~3㎝程度上に巻くように心がけましょう!
巻く強さ(きつさ?)
マンシェットの巻く強さ(きつさ)は、指が2本入るぐらいが適切といわれています。
マンシェットを緩く巻いてしまうと・・・
加圧したときにマンシェットの中のゴム嚢が外側にも膨れてしまい、加圧面積が減ってしまうので、ちゃんと巻いたときよりもたくさん加圧する必要がでてきます。
そのため、血圧が高くなるといわれています。
マンシェットをきつく巻いてしまうと・・・
マンシェットに空気を入れる前から上腕動脈を圧迫してしまっているので、測定値が低くなるといわれています
また、主観的苦痛にも影響があると報告がされており、きつく巻くと患者さんの主観的な苦痛が増してしまい不快に感じてしまうこと、緩く巻くと苦痛は軽減されるが、正しく測定できないといわれています。
色々な観点からみて、指が2本入るぐらいの強さがちょうどいいぐらいということで。
⑥触診法は動脈に触れる、聴診法は聴診器をあてる
触診法
触診法は、動脈に触れて、最高血圧の目安を測定することができます。
一般的には橈骨動脈に触れて、加圧していきます。
加圧していき、脈の拍動が感じられなくなったら、そこから10~20㎜hg程度上げて、ゆっくり圧を下げながら、最初に脈の触れたところが最高血圧の値になります。
橈骨動脈でもいいですし、上腕動脈でも構いません。
触診法は、あくまで目安です。聴診法とは10㎜hg程度の差はあることもあります。
緊急時の時や患者さんの血圧の状態が全くわからないときの方法として活用していきましょう。
聴診法
触診法である程度の最高血圧の目安がわかれば、聴診法で測定をしていきましょう。
聴診器を肘窩にあてます。
学校では、だいたい膜面で教えてもらってますでしょうか?
最近までは、聴診法ではベル面を推奨されていましたが、膜面でも十分に測定できるという報告があがっています。
そのため、膜面でもベル面でも測定は可能です。
ただ、コロトコフ音は低音域であるので、膜面を使用する場合は、しっかりと皮膚に密着をさせて測定することが重要になります。(ベル面もね)
肘窩より2~3㎝上に巻いているので、マンシェットに聴診器が重なることはないとは思いますが、マンシェットの下に聴診器が潜り込んでしまうことで、患者さんの腕を固い聴診器で圧迫してしまい事故につながったり、圧が均等にできずに測定値が正しくなかったりします。
きをつけましょう!
⑦圧を入れて測定をする
聴診法では、上記で記載した触診法で測定した値を目安にして空気を入れていきます。
聴診法の値より20㎜hg程度圧を上げます。
その時に、聴診器から音が聞こえてくるようでしたら、さらに20㎜h程度上げましょう。
(触診法より聴診法の方がやや高く値がでると言われています。)
そこから1秒に2㎜hgぐらいづつ圧を下げていきます。
慣れてきたらもう少し早く下げてもいいかなとは思います。
あまりにも遅いとうっ血を起こしてしまい、手のしびれや拡張期血圧が高くなるなど異常を起こしてしまうことがあります。
聴診器で聞こえ始めたところが最高血圧(収縮期血圧)になります。
その値をしっかりと覚えておきましょう。
聞こえ始めたら、コロトコフ音を参考にしながら、圧を下げていきます。
コロトコフ音は、第1点が聞こえるとそこから音が大きくなってきます。
第2点、第3点まではちょっと早めに下げても大丈夫です。
第4点に差し掛かってきたら(音が小さくなってきたら)1拍動2目盛りづつ下げていきましょう。
音が聞こえなくなった値が最低血圧(拡張期血圧)です。
⑧数値のメモをとり、終了する
測定し終わったらすぐにメモを取ってください。
何か違うことをしたら忘れます。(僕だけかもしれませんが・・・)
素早くメモをとったら、患者さんを元の状態にもどして整えましょう。
患者さんの袖があがりっぱなしとか、上着脱ぎっぱなしとかが無いように気をつけましょう!
終了したことを患者さんに伝えます。
その時に、血圧の値も伝えてあげていいと思います。
高血圧の方や、入院が長い方、ご高齢の方など、毎日の血圧の値をメモしたり、気にしたりするかたはたくさんおられます。
今日の調子を伝えることで、安心にもつながりますね。
おわりに
血圧測定について解説をしていきました。
根拠を考えながら測定することで、より患者さんの状態を正確に把握することができますね。
学生さんは、事前学習にも役立ててほしいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
血圧測定のあとは、報告が待っていますよね。
また報告の仕方も記事でアップできたらと思います。
今回の参考書です。
根拠については、ぴか一。
学生さんだけじゃなく、教員の先生にもぜひ一冊持っておいて損はありませんよ。