基礎看護技術の授業で与薬の援助について授業をしています。今は看護大学で勤めるようになって1年半ですが、その前は臨床で働いていました。
そのときの病院がリスクマネジメントがしっかりしている病院だったので、よく研修会とかも開いてくれていました。
そのときに、ダブルチェックについて学びました。
その話を聞くまではダブルチェックについてあんまり理解をしておらず、ぼくも実際にミスをした経験がありました。フェロミアの量が少し少なかったという内容だったので、患者さんには大きな影響はなかったのですが、かなりショックでした。
学生さんには、そんな経験をさせたくないと思い、授業でダブルチェックについて取り入れて演習もするようにしました。
そこで、今日はこの記事を見てくださっている方にもダブルチェックについて、簡単にですが説明をしていこうと思います。
もくじ
医療安全について
医療現場における安全を確保することは、医療安全という言葉で表されることがよくあります。
医療安全について関心や意識が深まった事件
1999年1月にA大学付属病院において、心臓疾患と呼吸器疾患の二人の患者がそれぞれ誤認され、心臓疾患患者に肺手術が呼吸器疾患の患者に心臓の手術が行われ、双方とも手術終了後に誤りに気が付くという患者取り違え事故が発生した。 |
1999年2月にはB病院にて看護師が消毒液とヘパリン加生理食塩水を取り違えて静脈内に投与したことから、患者が死亡するという取り違え事故が発生した |
このような事件「医療事故」があったことで、リスクマネジメントについて関心が高まっていきました。
「医療事故」とは医療に関わる場所で、医療の過程において発生する人身事故一切を包括する言葉として使われているます。その中でも、「医療過誤」は医療の過程において医療従事者が当然払うべき業務上の注意義務を怠り、これによって患者に傷害を及ぼした場合をいいます。
やるべきこと、決められたリスクマネジメントを怠ったことで起こす傷害である「医療過誤」が大きな事件に発展するといってもいいのかなとぼくは考えます。
6つのRと確認のタイミング
与薬での安全管理のひとつに、6つのRという確認事項があります。
正しい薬剤(Right drug)
正しい量 (Right dose)
正しい方法(Right route)
正しい時間(Right time)
正しい患者(Right patient)
正しい目的(Right purpose)
これが6つのRです。
この内容をしっかりと確認することが必要になります。
では、どのタイミングで確認する必要があるのでしょうか。
準備の段階で3回の確認というのを行います。
注射の場合
1.取り出すときに確認
2.準備するときに確認
3.廃棄するとき
この3回のタイミングで6つのRで確認をしてください。
その確認をするときの方法がダブルチェックになります。
ダブルチェックについて
ダブルチェックとは、2重で2回確認するということです。2人で確認を行うことがダブルチェックというのではありません。これは、ぼくも知らなかったです。2人でするとダブルチェックだと思っていました。必ず6つのRで実際の薬と処方箋や伝票を指差し呼称をして確認をするようにします。
ダブルチェックには数種類あります。代表的なものを挙げます。
1人連続型
1人で同じ方向に2回確認する。
1人双方向型
1人で1回目と2回目で違う方向から確認をする。
2人連続型
2人で同じ方向から2回確認をする。
2人双方向型
2人で1回目と2回目で違う方向から確認をする。
精度の高さとしては、2人でのチェックが高いと言われています。しかし、二人で実施することに対するデメリットというのがあります。
デメリット
過信をしてしまう傾向があり、社会的手抜きというのが発生することがあります。二人で見ているから大丈夫だろうという思い込みや過信をしてしまいがちになると言われています。
次に、時間がかかり過ぎるというのもあります。ダブルチェックでよく使われている確認方法が「二人連続型」と言われており、精度は2番目に高いです。ただ、所要時間はシングルチェックの2倍かかります。
最も制度の高いと言われているのが「二人双方向型」です。しかし、その所要時間はシングルに比べると4倍かかります。
さらに2人で確認を実施するという場面を思い浮かべてみてください。2人で確認するためには、まず、もう1人の人を呼んでくるという作業がいります。日勤帯の人がたくさんいるときならば、すぐに声をかけることができるかもしれません。しかし、夜勤帯の夕方や早朝などはどうでしょうか。人数が少ないうえに、すごくバタバタする時間ですよね。その時に、人探しをして、声をかけて、こっちまで来てもらって、確認をして・・・。すごく時間がかかりますし、来てくれる看護師さんの看護業務を中断してしまうことになってしまいます。もしかしたら、それが患者さんに不利益なことになるかもしれませんし、違う事故につながるかもしれません。
2人で確認をするという時にここまで考える必要があります。そこで、1人で行うのに有効なのが「1人双方向型」のダブルチェックです。このダブルチェックは、「2人連続型」と同じぐらいの精度(2番目の精度)と言われています。ですので、「1人双方向型」を活用していただきたいと思います。
ただ、麻薬やインスリンなどのハイリスク薬の場合とか、病院で2人で行うことが決められているものは、必ず病院の通りに実施してください。
また、時間が確保できているときなどは、1番精度の高い「2人双方向型」ダブルチェックをするようにしましょう。
特に、看護師さんになって1年目や2年目など、確認の技術が身につく前までは「2人双方向型」で確認をお願いします。
まとめ
今回は医療安全からダブルチェックについてお話をしていきました。
人間はミスをする性質があります。うっかりしたり、不注意、夜勤明けの集中力の低下、慣れや簡略化をしてしまったり。
ダブルチェックの本来の意味や確実な技術を身に付けて、医療事故を防げるようにしていってほしいと思います。
厚労省もダブルチェックについて資料を提示していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/kenko_fukushi/000085434.pdf