看護の基礎技術

口腔内のフィジカルアセスメント

今回のフィジカルアセスメントは、口腔内です。
口腔内についてですが、今回のメインは「食べる」というところにスポットを当てていきたいと思います。
食べるためには、いろいろな器官や筋肉、神経が関連してきますね。
あまり多くの情報を載せてしまうと難しくなってしまうので、少しずつやっていきたいと思います。

今回も参考文献をたくさん使用しています。
皆さんに合った参考書を選んでもらえたらなって思います。

口腔の基本構造と機能

口腔は、呼吸器器官の最初の入口になったり、話をするという機能をもっていたりしますが、食べるという消化器系の気管としての意義が大きいといえます。
口腔内は全面を粘膜で覆われており、鼻腔との境目を口蓋とよび、前2/3を硬口蓋後ろの柔らかいところを軟口蓋といいます。

舌で触ってみると硬さの違いがわかると思います。
軟口蓋の中心にある突起物は口蓋垂(のどちんこ)で、正常の場合は正中に位置します。
口蓋垂の左右、咽頭部には口蓋扁桃がありますが、大きさに個人差があるので、見えやすい人、見えにくい人がいます。
感染時には口蓋扁桃の発赤、腫脹、分泌物などがみられます。

口腔内にはがあります。
舌は、ザラザラした表面の舌乳頭で覆われ、舌小帯によって口腔底に固定されています。
舌は食事を摂取したときに食べ物と唾液を混ぜ合わせ、咀嚼、嚥下をスムーズに行うのに役立っています。
味覚にも関与しており、舌咽神経、顔面神経に支配されています。
舌は話をするという点でも、構音(なめらかに発語する)を助ける役割を持っています。
これらの機能を果たすためには、舌が自由に動かせる状態であるということが必要になります。

口腔内には歯もあります。
歯は成人では32本、上下に16本づつ生えます。

唾液腺には耳下腺・舌下腺・顎下腺の3つがあります。
耳下腺最も大きい唾液腺です。開口部をステンセン管といいます。上の第2大臼歯近くの頬側の粘膜にあります。
舌下腺は舌下に位置します。
顎下腺は、舌下腺の前あたりにあり、開口部であるワルトン管は口腔底の舌小帯の両側にあります。
舌下腺は多くの小さな開口部があり、舌下ヒダに分布しています。
唾液の分泌は、咀嚼や嚥下、口腔内の清浄を保つ(自浄作用)のに重要です。

口腔に関係する脳神経 舌咽神経(Ⅸ)

9番目の脳神経の舌咽神経は口腔内に関与しています。
舌咽神経は、舌の後ろ1/3の味覚と、咽頭・軟口蓋などの知覚、咽頭の運動と耳下腺による唾液分泌を司っています。
感覚神経、副交感神経、運動神経に関与する混合神経です。
味覚も含めた知覚情報は舌咽神経を通って同側の延髄へ行き、両側の大脳皮質に行きます。

口腔に関係する脳神経 迷走神経(Ⅹ)

迷走神経外耳道、咽頭、喉頭の知覚と運動を司る混合神経です。
迷走神経は脳神経の中でも最も長く、のどから胸腹部の臓器に至る広範囲に分布する副交感神経線維も含んでいます。
迷走神経の運動枝は咽頭と軟口蓋の筋肉を支配し、嚥下運動の中心的役割を果たします。
迷走神経の枝である反回神経は、咽頭筋(声帯)を支配し発声に関与しています。
迷走神経は、様々な働きがありますが、主に自律神経系としての動きと摂食・嚥下に関する運動としての働きを担っています。

口腔に関係する脳神経 舌下神経(Ⅻ)

舌下神経は舌の運動を司る運動神経です。
口蓋舌筋以外の舌筋に分布し、舌の位置や形状を変える動きを司っています。
口蓋舌筋は、舌根を挙上させる働きをもつ筋肉で迷走神経が支配しています。

口腔に関係する脳神経 顔面神経(Ⅶ)

顔面神経には、舌の前2/3の味覚、副交感神経成分としとしても、舌下腺・顎下腺からの唾液分泌を司っています。
表情筋については、顔面のフィジカルアセスメントの記事を参照してください。

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口腔のフィジカルイグザミネーション

口腔内をよく観察できるように、ペンライトや舌圧子を準備しておきましょう。

1.口腔の観察
舌圧子とペンライトを使って口腔内の粘膜をよく観察します。
口腔の前庭(唇の裏)、頬部粘膜、口腔底粘膜(舌の下)について、色つや、湿潤状態、出血・圧痛・腫脹・潰瘍の有無を観察します。

2.歯・歯肉
咀嚼が困難になっていないかを観察します。
歯肉の腫脹、出血の有無などを確認します。抜けた歯の本数と位置も確認します。
歯は、歯の状態、欠損、齲歯、ぐらつきや痛みを感じるものがないかを確認しましょう。

3.舌、舌の可動性
舌の表面を観察します。色つや、形状の左右差、舌苔の有無をみます。
舌を出してもらい、左右に動かしてもらい、可動性を観察します。

4.軟口蓋・咽頭の観察
口を大きく開けてもらいます。
口腔内を観察しやすいようにペンライトで照らします。
患者さんに高めの声で「あー」と言ってもらいます。
軟口蓋、口蓋垂、咽頭後壁の動きを確認します。
軟口蓋の挙上は、口蓋垂の根本をみておくと確認がしやすいです。

口腔のフィジカルアセスメント

口腔内の異常所見についてみていきます。
口腔粘膜の損傷や潰瘍などの異常が見つかった場合は、痛みの有無やいつからなのかなどを確認します。また、患者さんの全身状態や治療内容などもアセスメントしていきましょう。

歯や歯肉に関しても同様で、痛みの状態なども問診していきます。歯周病などがある場合は、既往歴にも注意します。

舌の可動性については、脳神経からアセスメントをしていきましょう。
動きに左右差がみられたときは、舌下神経障害について考えていきます。
舌下神経は片側支配のため、中枢性障害では舌は障害部位と反対側に偏位します。
末梢性障害では、障害側と同側に偏位します。

※舌下神経の神経核は延髄にあります。延髄にかかる脳血管障害や脳梗塞では、末梢性の舌下神経麻痺となります。
この場合は、延髄に神経核があるほかの脳神経(舌咽神経、迷走神経など)の障害が伴うことが多くあります。
延髄より上位の脳血管障害や脳腫瘍では、中枢性舌下神経麻痺がみられます。
両側とも障害された場合は、舌を口から外に出すことができなくなります。

舌の動きが障害されると、咀嚼力の低下や食べ物の咽頭への送り込みの障害が生じます。
舌を左右に動かしてもらうことで、麻痺の程度を把握し、摂食嚥下のアセスメントにつなげていきましょう。

軟口蓋・咽頭の観察は、正常では軟口蓋は左右対称に挙上し、口蓋垂は正中に位置しています。
障害がある場合は、軟口蓋の麻痺側が挙上せずに、口蓋垂が健側に偏位します。
とくに咽頭後壁のひだの偏位をカーテン兆候といいます。
軟口蓋の動きが障害されると、嚥下時に食塊や水分が鼻腔に流れることがあります。
また、反回神経麻痺があると患者さんの声がかすれた声になります。

※大脳より下位運動ニューロン(延髄以下)が障害されることで起こる嚥下障害、構音障害を球麻痺といいます。
原因として、ALSや重症筋無力症、脳幹での脳血管障害などがあります。

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まとめ

口腔内の状態をしっかりと観察することができれば、患者さんの「食べる」だけじゃなくて、呼吸や発声ためのアセスメントにもつながっていきますね。
患者さんの状態を把握して、ADLの向上を目指していきましょう。
今回の参考文献です。
「看護が見える。フィジカルアセスメント」「はじめてのフィジカルアセスメント」「説明できる解剖生理」「フィジカルアセスメントガイドブック」です。
いくつかの本を見ることで、自分が理解しにくかったところも克服できるようになります。
たくさんの本を手にとってみてみてくださいね。

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