看護学生になると、学生さん同士で援助の練習をしたり、患者人形シミュレーター(さくらさん)で注射の練習等をしたりします。
援助者をする学生さんも患者役をする学生さんも、知っている人同士なので、照れてみたり、適当な声掛けになったりもします。
また、患者役の学生さんが自分で動いて、援助者の補助をしてみたり。
せっかく練習、演習してるのに、シミュレーションやロールプレイにならない様子がまぁまぁみられます。
本当にもったいないなーって思います。
ここでどれだけそのシチュエーションに入っていけるのか。練習や演習でも、そのシチュエーションの中にグッと入れる学生さんは、実習に行っても違います。やっぱり本番だと思って練習をしていたら、リアルな失敗も経験できますし、コミュニケーション一つとっても言葉を選ぶ訓練にもなります。
このシチュエーションの中に入る技術というのは、看護の能力を高めるのにとても重要な技術になります。
看護は実戦の科学と言われており、机上の学習だけで学べることよりも、実戦のなかで学べることの方がたくさんあります。だけらこそ、看護学生の時に病院、病棟へ実習にいきます。
演習や練習でのシミュレーションで、そのシチュエーションに入っていけるということは、その分の実戦値を積むことができます。
それは、どれだけリアルなイメージでできるのかで差がつきます。本当に。
プロのスポーツ選手でも、本番を想定したイメージトレーニングは必ずされています。それだけシミュレーションでイメージしながら練習するのは重要なことです。
実習に行くと、「後ろで先生が見てたらできません。」「指導者や教員がいるだけで緊張してできません。」というようなことを時々聞きます。
これは、そのシチュエーションの中に集中して入りきれていないということです。
そして、これが何に繋がっているのかというと、ベクトルが自分に向いている状態であるのに繋がっています。
自分が見られて恥ずかしい、失敗したら怒られる…とか。
向けるべきベクトルは患者さんですよね。
このシチュエーションの中には自分と患者さんだけなのです。(補助の看護師さんや医師がいるときもありますが。)
自分が集中して、患者さんに対してどのような援助を行っていくのか。そこには、向けるべきベクトルは患者さんで、自分でも、先生でも、指導者でもありません。
なんだったらそのシチュエーションの中に、先生や指導者を巻き込むぐらいの集中力を出してくれたらとも思います。
そうすることで、本当にできたこと、本当に失敗したことが見えてきて、実戦値に繋がっていきます。この実戦値が皆さんを素敵な看護師さんに押し上げていくものになると思います。
ただ、実戦での失敗は許されません。本物の患者さんがいるので。
だからこそ、普段の演習や練習を大切にしてほしいです。シチュエーションの中に入って、実戦的なシミュレーションをしてください。できるようになってください。
これができるようになると、看護師になったときにもきっと役に立ちます。
自分と患者さんのシチュエーションを作り出して、二人だけの空間を作るんです。患者さんに素敵な看護を提供するという空間を作ります。
その空間内では、患者さんのための本当に素敵な看護の時間が流れます。
この空間を「看護の領域展開」とぼくは呼んでいます。
領域を展開するのは、地道な努力が必要です。そして、自分が看護師として向上したいという気持ちが大切です。
領域展開じゃなくて全集中でも構いません。
ベクトルを患者さんに向けた看護実戦ができるように、イメージトレーニングやロールプレイ等もシチュエーションに入っていける訓練をしていきましょうね。