今回のテーマは「聞く」のフィジカルアセスメントです。
「聞く」については、耳の解剖や聴神経への伝導について知っておく必要があります。
ちょっと苦手だという方もいるかとは思いますが、少しでも苦手意識を克服できるよう、できるだけ簡単にお話をしていきたいと思います。
聞く仕組み
耳には機能が2つあります。1つは音を聞く機能で、もう一つが平衡感覚をつかむ機能です。
今回は聞く機能がテーマですので、聞く機能の仕組みについてみていきましょう。
音が「音」として認識されるのは、音が空気の振動によって伝わる波となって、その振動により鼓膜をふるわせます。
鼓膜は、外側が皮膚、内側が粘膜の薄い膜になっています。
鼓膜が震えることで、中耳にある耳小骨に伝わります。耳小骨は、3つの骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)のことで、人体最小の骨といわれています。
耳小骨が連なり、鼓膜の振動を約20倍の大きさのに拡大・増幅させます。
この増幅された振動が前庭窓から内耳に伝わります。
内耳は、半規管、前庭、蝸牛で構成されています。
音としての振動の波は、前庭窓から蝸牛に伝わり、蝸牛にあるリンパ液(蝸牛内はリンパ液で満たされている)の働きによって有毛細胞が動かされて、有毛細胞から電気刺激として蝸牛神経を通り、側頭葉にある聴覚中枢に届くことで「音」として認識されます。
外耳・中耳までの経路を伝音系、内耳以降の経路を感音系といいます。
伝音性と感音性
音は、振動という波で聞こえるようになります。この波は「空気から」と「骨から」の伝導経路があります。これらを空気伝導、骨伝導といって、主となるは空気伝導です。
骨伝導では、頭蓋骨を介して内耳に振動を伝えます。ただ、2000Hz以上でないと起こらず、伝わり方が弱いです。
高い音は高周波といいます。高周波はおもに蝸牛の根本のほうの有毛細胞を動かし、低い音の低周波は遠くまで伝わるので、蝸牛の先端のほうにまで伝わって、先端の有毛細胞を動かします。
外耳(耳介と外耳道)と中耳(鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管)までの経路が伝音系と呼ばれます。この間で障害が起こり、聞こえにくくなるのが伝音性難聴と言われます。
伝音性難聴の原因は、外耳道に耳垢が溜まってて音の通りを妨げている場合や鼓膜が破れてしまった場合、中耳炎などで耳小骨が動かなくなってしまった場合です。
骨伝導の場合であれば、頭蓋骨を介してに内耳に振動を伝えるので、伝音性難聴でも音は聞こえます。
内耳-蝸牛-感覚中枢の間の障害で聞こえにくくなるのが、感音性難聴といいます。
音が蝸牛まで届いても、それを音の刺激として感じられないか、蝸牛で発生した電気刺激を脳まで伝えられていない状態です。
メニエール病や突発性難聴、騒音性難聴などがあります。これらは、蝸牛あるいは聴神経に障害が起こっていると考えられているため、治療が難しい難聴です。
老人性難聴も感音性難聴になります。
老化に伴い蝸牛の根本の有毛細胞から抜けてしまいます。そのため、高周波の音で反応する有毛細胞が少ない状態になっています。つまり、高い音が聞こえにくくなるのです。
高齢者に低い声で話したほうがいいのは、こうした理由からですね。
聞くのフィジカルイグザミネーション
外耳
外耳の視診・触診
耳介の大きさ、形、位置の左右の対称性を診ていきます。
耳介の皮膚の状態では、表面だけじゃなくて裏側も診ていきます。
発赤、損傷、結節の有無などを観察しましょう。
外耳からの浸出液・分泌物の有無
触診では、耳介だけではなく乳様突起部を触り、圧痛や腫脹、結節の有無を確認します。
聴力
聴力のスクリーニング
患者さんの耳から30㎝ほどの距離(患者さんの視界に入らない位置)から数字や言葉をささやき、聞こえたら復唱してもらいます。
ここで異常がみられたら、次のスクリーニングをしていきましょう。
難聴のスクリーニング
伝音性難聴か感音性難聴をスクリーニング リンネテスト
音叉を使用します。
振動させた音叉を耳介の裏側の乳様突起部に当て(骨伝導の検査)、振動音が聞こえなくなる時間を測定します。
聞こえなくなったらすぐに外耳のそばに音叉を置き換えて(空気伝導の検査)、音が聞こえなくなった時間を測定します。
両方の時間を足した時間が空気伝導の時間になります。
伝音性難聴か感音性難聴をスクリーニング ウェーバーテスト
音叉を使用します。
振動させた音叉を頭頂部中央に置きます。音は骨伝導で左右の耳に均等に伝わります。どちらの耳で音が大きく聞こえるのかを確認します。正常では左右の音に差はありません。
聞くのフィジカルアセスメント
外耳の状態を観察し異常が発見された場合は、どのような症状なのか、いつからなのかなどの聞き取りもしていきます。必要であれば、医師に報告し精査を依頼します。
聴力のスクリーニングで異常がみられたら、音叉を使用した伝音性難聴か感音性難聴の鑑別をします。
正常では、空気伝導の方が骨伝導よりも長時間(2倍程度)聴取できます。
骨伝導が長かった場合は、伝音性難聴。外耳から中耳で異常があると考えましょう。
※なぜ伝音性難聴があると骨伝導のほうが長いのか。
中耳までの道での障害で聞こえにくくなるのが伝音性難聴でしたね。
伝音性難聴は、なんらかの影響で空気伝導の振動が届きにくい状態ですので、骨を介して振動として感じる骨伝導のうほうが強く聞こえます。
正常では左右差はありません。
患側が大きく聞こえると伝音性難聴です。
患側が小さく聞こえると感音性難聴です。
※なぜ伝音性難聴では、患側の耳のほうが大きく聞こえるのか。
片方の耳が詰まっているなどの中耳までの道での障害で聞こえにくくなっている伝音性難聴では、そちら側の耳に周囲から入るほかの音が遮断させるために、音叉の振動音が際立って響きます。つまり空気伝導が遮断されてしまうために骨伝導の音が通常より響きます。
試しに自分で片方の耳をふさいでみてください、ふさいだ側のほうが大きく聞こえますよ。
まとめ
聞くのフィジカルアセスメントについて、少しは理解できましたでしょうか…
苦手意識を克服して、前に一歩踏み出していただけらなーと思います。
あと、内耳神経に関しては、平衡感覚についても知っておく必要があります。それは、またの機会でお話させてもらおうかと思っております。
今回の参考文献です「フィジカルアセスメントガイドブック」「看護がみえる。フィジカルアセスメント」「楽しく学ぶ!看護につながる解剖生理」でした。
どの本もとってもいい本だと思います。ぜひみなさんも活用してください。